コスチューム姿で再びリングに登場した『Fairy You』。グラビアでも見せことのない際どい水着姿に、沸き返る大観衆。
「ねえ、勇希。私たち本当にプロレスするの? それにこの水着やばいよ~。後ろほとんど裸だよ。」
「本当、これじゃ動くととれちゃいそう。いったい、ここの連中何考えてるのかしら? えっ、何? 相手は男子レスラーなの? あれは? さっきのリングアナ??」
対戦相手は、おなじみのへっぽこレスラー、ドン・ポーゴと、なんと『Fairy You』のプロレス転向を宣言したリングアナだ。
「ほっほっほ、驚いたか! わしは、マグニフィセント・権三(ごんぞう)。レスラーでもあるんじゃよ。」
(ええ~、レスラーって、いったい何年前の話だよ。)
心の中で突っ込みを入れるドンを見透かしたように、声をかける権三。
「良いな、だれのお陰で現役アイドルと試合できるか、わかっておろうな。」
「そりゃーもう。もちろんゴンさんのお陰です。」
『Fairy You』の対戦相手の抽選は、どうやら権三が細工をして自分と、言うことを聞きそうなドン・ポーゴを選んだらしい。
「俺も、『Fairy You』の大ファンなんだよね、後でサインもらおうと思ってたんだけど、まさか試合できるなんて。それにしても、あのコスチューム、セクシー~~。」
いつもに増して張り切るドン。
先発は優菜とドン・ポーゴ。格闘技経験などもちろん無い優菜としては、逃げ回るしかないのだが、遂にはドンに捕まってしまう。
「優菜ちゃん、逃げてばっかりじゃあプロレスにならないよ。ほれ、つーかまえた。」
「いやっ、離して!」
「でかしたぞ、ドン。早くこっちのコーナーへ連れてくるんだ。」
優菜を捕えたドン・ポーゴが繰り出したのはコブラツイストだ。
「おおっ、優菜ちゃんと俺の体が密着してるよ。うう、たまらん~。」
「あう~、痛い、痛い、痛い、痛い。」
三流レスラー、ドンのコブラツイスト、レスラー相手には何てことの無い技なのだが、素人の優菜にとっては、地獄の苦痛だ。
「優菜ちゃん、悲鳴も良いねえ~。これならどう?」
さらに右拳を優菜の脇腹にねじ込むドン。グリグリグリ。
「止めてー! 痛い、痛い、痛い。」
「さあ、そろそろわしの出番かな。」
おもむろにリングインする権三。
格闘技経験など全く無い現役アイドル『Fairy You』を襲うプロレス地獄。これから、いったいどうなる?
首都圏の大会場での大会。
セミファイナル前のリング上を盛り上げるのは、勇希(左)と優菜(右)の2人組、人気アイドルの『Fairy You』。リリースする曲すべてが、ヒットチャート1位を記録する、今や知らぬものなどいない国民的アイドルだ。
最新ヒット曲を歌い終わった『Fairy You』の前にリングアナが登場。
「ここで、会場の皆様に緊急のご報告があります。本日、『Fairy You』の所属事務所、サンデー・プロダクションが倒産、我がWSMプロレスリングが経営権を獲得いたしました。」
「ええっ、私たちの事務所が倒産?」
「いったい、どういうこと?」
「本日を持ちましてサンデープロ所属のアイドルは全員、WSM所属のプロレスラーになります。次の試合は急遽、『Fairy You』のデビュー戦に変更いたします。」
驚愕の発表内容に、会場中に広がるどよめきの声。
「えええ~、私たちが、プロレスを? 」
「何、言ってるの? そんなの出来るわけ無いじゃないの?」
2人の抗議を無視、発表を続けるリングアナ。
「対戦を希望する男子レスラーは、リングに至急集合。なお希望者多数の場合は、厳正な抽選で決定します。それでは、『Fairy You』はコスチュームに着替えるため、一旦退場。」
サンデー・プロダクションの倒産劇は、もちろんWSMの助平オーナーが仕組んだ陰謀。『Fairy You』の大ファンである助平オーナーは、水着写真集を見るだけではあきたらず、自分の想い通りのエッチなコスを着せてリング上で現役アイドルをいたぶるつもりだ。いったい『Fairy You』の運命は?